【人材育成 for DX】開催レポート #7「サントリーグループのデータ人財育成 ~現場社員の成果創出に向けた取り組み~」

ゲスト:サントリーホールディングス株式会社 吉川 和宏氏、サントリーシステムテクノロジー株式会社 長谷川 寿延氏

座談会・質疑応答

 プレゼンテーション終了後、長谷川さんにも加わっていただき、モデレーターの岡田と座談をしながら参加者から寄せられた質問にお答えいただきました。個別の質問とともに、参加者から特に気になるテーマを投票していただくスタイルで進行します。特に「E:データ活用人財の活躍状況について」への関心が高い参加者の方が多いようです。

――「A:サントリーグループのDX」について。データ戦略部は今年立ち上がったというお話もありましたが、いつ頃からDXに着手されているのでしょうか。

長谷川

 具体的な時期のお答えは難しいのですが、近年突然「DXだ」と言われるようになった、とは捉えていません。サントリーグループは創業以来、商品・品質のモノづくりにもこだわりつつ、お客様の生活をより豊かにするコトづくりにも力を入れてきました。デジタルの力を使って、お客様に新しい体験を提供して生活を豊かにしていただきたい、というところに、たまたまDXの手段が増えてきた、と捉えています。

――「B:“データ人財”育成」について。「心構え(マインドチェンジ)」と「武器」という2つの要素に行き着いたのは、どのような背景があったのでしょうか。

吉川

 当社は「KKD」、つまり「勘・経験・度胸」と言われるものが非常に強いことが特徴です。裏を返せば、データをあまり見ずに決めたことをしっかりやり切ることに強さがある。そこに、基礎素養として「データをきちんと確認するところは確認しよう」というところにも力を入れたらさらに強くなるのではないか思い、マインドチェンジを起す人材育成を戦略的に行っています。

――4万人いる社員の中で、研修には何人くらい参加していますか。

吉川

 今年から走り始めた研修ということもあり、まず前者のマインドチェンジ研修は20人です。各部署の事業のトップ層(エグゼクティブ層)から、マインドをしっかりと推進してくれる、事業を変えられるような人材を選んでいます。下期も20~30人での実施予定なのですが、各部署で「自分も自分も」と伝播していけばと思っています。

――プログラムはどのように制作し、実際に誰が教えているのですか。

吉川

 前段のマインドチェンジ研修は、外部講師も活用しています。データ活用の定義はデータ戦略部が作って重要なポイントを押さえた上で、一部外部の講師の方にお手伝いいただいています。後者の武器育成は、元々この活動は約2年前からSSTで行っていたものです。実際にBIツールを使える社員も徐々に増えていて、講師は社員が努めていますし、有識者伴走も社員の力を借りています。

長谷川

 また、約2年前からSSTでは、この研修以外にも「AIを民主化する」という考え方のもと、若手社員が社内講師としてグループ全体に向けて研修を行うという取り組みも行っております。G検定についても、SST全体で取得に向けて動いています。

※参考記事:入社2年目でAI社内研修の講師を担当 IT部門のみならず事業部門こそ「AI活用のアイデアを」

――研修期間は、研修と業務のバランスはどのようになっていますか。

長谷川

 全社とSSTの位置づけは異なっています。SSTでは、4~6月の3カ月間の入社時研修の際に、サントリーで使用している技術を学んだのちに、7月から配属になります。

 一方、G検定やデザインシンキング、データ分析のBIツールの勉強は、配属後の業務の中で出てくること。その時々の重点テーマは、集合研修という形で再度研修を実施しています。それはIT企業として、「5%ルール」で業務時間の5%を研修に充てて自己研鑽を促すという考え方で行っています。

吉川

 全社に関しては、今回お話しした2つの研修のどちらも座学自体は1~2日間で終わる内容で、「業務時間の何%を充ててください」とは掲げていません。「研修中だけ業務量減らしてください」ではなく、「業務の中で習ったことをそのまま活かしてください」というスタンスでいます。業務実践しやすい環境をつくるためにも、各部署とはしっかりとネゴシエーション取った上で取り組んでいます。

――社内における人材育成の機運について。「本当にやるべき?」「参加しない」などと、ブレーキかける部署や人が出てくる会社も多いですが、サントリーグループさんではいかがですか。

長谷川

 全社的な取り組みとして、Teamsの中にサントリーのDXを盛り上げる全社横断のグループが立ち上がっています。自由に参加しながら、活発に意見交換することで事業の課題が見えてくる、こういった場があることで、機運を盛り上げることにつながっていると感じています。

――「C:『データ活用する上での心構え』の教育について」。ディープラーニングやAIを実装しようと思っても「そもそも課題がわからない」という声も多いです。課題設定に多くの時間を使われているという話もありましたが、具体的にどのように進めていますか。

吉川

 完全に現場に投げてしまう、というのもひとつあると思います。

 座学研修ではまず、「目的」「仮説」「そのためにどんなデータが必要なのか」、この3要素だけを書いてください、とパワポ1枚の簡単なフレームワークから始めます。その方個人の考えではなく、部署を代表して書くぐらいの勢いで、この1枚をまずしっかり書いて出してもらいます。その課題の方向性が間違っていないかどうか講師からのフィードバックも入れて確認はしますが、現場の生々しい課題をしっかり書いてもらうことをまずスタートにしています。

 データから入ってしまうと結局フレームワークに沿った話になりがちなので、現場課題や検証したいことなどの目的から入って、「それに必要なデータは何か?」という順番で行っています。

――「D:『分析の幅を広げる武器』の教育について」。最後の実践まで伴走することで成果を結んでいるというお話が印象的でした。この伴走は長谷川さんも行っているのですか。

長谷川

 いえ、任せています。システムのサービス部門、運用保守している部門はチームごとに担当窓口があるので、チームごとに詳しいメンバーがアシストする形です。

吉川

 私は前の部署がSSTで、まさにこういった業務をしていました。事業課題を聞きに行き、「BIツール使えます」と提案をすることも多かったですし、「新しい武器使いたい」という空気が醸成されてきていました。

 伴走は、いかに自分ゴト化して火を付けさせるかが重要です。伴走する際は「あなたのやりたいことはこうですよね」と入り込んで、こちらで分析の型を提示してあげることもしています。

 また、元々悩みを持っていた方は、ツールを教えるとまさに水を得た魚のようで、自分から活用してうまくいっている方が多かったですね。もちろん「思っていたのと違う」「既存のツールで十分だった」と再認識される方もいますし、正解はありませんが、なるべく皆さんの業務に寄り添うように意識しています。

――「E:データ人財の活躍状況」について。現状の手応えや成果はいかがですか。

吉川

 「データ活用したから、これぐらい売上できた」など、定量的な効果を測るのは正直厳しいところだと思っています。現場の課題を解決できる一つのフレームワークの考えになっていると徐々に浸透させていく、その繰り返しかなとは思っています。


 当日寄せられたご質問のうち、セッションの中でお答えしきれなかったものについて、サントリーグループさんからご回答をいただきました。

――資格試験(DS検定、G検定、統計検定)など、サントリーで推奨している資格や資格支援制度はありますか。

 G検定はSST内で推奨しています。サントリー全体では特に推奨していませんが、研修は実施しており取得者多数です。

――Excelプラスαのαは具体的にどのようなツールですか。

 Tableauを標準BIツールとして活用しています。

――それほどまで組織だってデータ活用に投資するとなった背景は。

 DXに必須で避けて通れないため。

――研修を通じて、各営業部門でもBIツールを活用していると思います。一方で、全体の営業統括をしている部署から、全社共通のダッシュボードを提供している事例はありますか。

 目的にもよりますが、営業部門向けや部門横断のダッシュボード等は提供しています。

――分析の武器であるBIツールについて。事業部によって導入するべきBIツールは違うと思いますが、どのような点に気を付けてツールを選定したのでしょうか。

 個別で導入できる場合は良いですが、相談が来た場合に、開発や運用ノウハウの共有のため基本的にはTableauを社内標準ツールとして推奨しています。操作面や国内外で多く利用されており、コミュニティ活動も盛んな点で選定しています。

――文化的に「KKD(勘、経験、度胸)」が強いと、ITやデータがone of themになりそうな気もしますが、三本柱にまで上がったのが意外です。経営トップの意向も強いのでしょうか。それとも「やってみなはれ」で、ボトムアップ的にITやデータが重要視されたのでしょうか。

 基本、ボトムアップに近いですが、IT部門のトップの意向は強く、担当役員の理解はあると思います。

――社内コミュニティは盛り上がっていますか。盛り上げるための秘訣があれば教えてください。

 若手も気軽に発言できる社風はあるかと思います。盛り上げるための工夫は、コミュニティだけのコミュニケーションだけでなく、別途イベントや交流会等の施策も行っています。


 オンラインセミナー「人材育成 for DX」は今後もさまざまな企業の実践者をお招きし、月に一回のペースで継続して皆様にデジタル人材育成の事例をご紹介してまいります。