【ディープラーニング×ビジネス】#8 ファッショントレンド解析からスマートシティへーー「待ちのない街」と「情報に出逢える街」が生み出す循環

ディープラーニング 活用事例紹介 #8[ニューラルポケット株式会社]

スマートシティにおけるディープラーニングの位置づけ

――御社の事業におけるディープラーニングの位置付けについて教えてください。

佐々木

 もちろんディープラーニングは当社におけるコア技術であることに間違いありませんが、スマートシティ実現のためにはもちろん、ディープラーニングなどAIと言われる領域以外も整備しなければいけません。そのために実現すべきことは3つあります。

 ひとつめはカメラに映る画像を認識しデータ化する、つまり非構造化データを構造化する変換器としてのディープラーニング。次に、構造化されたデータから意味合いを引き出すプロセス。最後に、人に行動を起こさせるラストワンマイルをしっかり創り上げることです。

 先程申し上げたように、「待ちのない街」を実現するためには、人に何らかの行動を起こさせる必要があります。データを取得して分析して終わりではなく、予測の可視化や最適化された選択肢の提示などを通して人に行動を起こしてもらう必要があります。ダイナミックプライシングで直接インセンティブを与えてもいいですし、サイネージで情報との出会いを促すことでも構いません。

 この「1. 認識して構造化」し、「2. 意味づけ」し、「3. 行動変容」を起こすというステップにおいて、AIは1と2、ディープラーニングは特に1の部分においてコアとなってきます。ステップ3までいくと、ハードウェアの活用やビジネスとの融合など、検討するべき打ち手が幅広くなります。

車両検知の商用化の難しさ

――御社のディープラーニングの活用事例について教えてください。

佐々木

 さまざまな事例がありますが、代表的なものでは駐車場での車両検知でしょうか。設定されている区画の車両を検知し、認識された車があれば緑、なければ赤で表示しています。

 導入いただいたSMARK伊勢崎という商業施設では、同施設のアプリ内で駐車場の空き状況を把握できます。これにより誘導の効率化が可能で、先ほどのスマートシティにおける行動変容につながっている例と言えます。

※ニューラルポケット社提供

佐々木

 車両検知そのものはディープラーニングの基本中の基本とも言えるもので、オープンなモデルを使えば誰でも作れるものですが、商用化までのハードルの高さを語る上で良い事例です。

 このソリューションは北は北海道から南は沖縄まで設置されていますが、たとえば山に設置されていると夜に霧が出たり、雪や雨も降ってレンズが濡れたり、夜の山奥で駐車場にライトがないなどの要因で誤検知を起こしやすいのです。当社ではデータを数多く収集したり、AIモデルの改良を行うことで、これらの自然現象など誤検知を引き起こしやすい要因に対しての頑健性を高めています。

 AIとは少し関係ないところですが、エッジ端末へのAI実装技術も当社の強みのひとつです。

 エッジ処理のメリットはたくさんありますが、ひとつは映像をサーバーに送る必要がないので、通信でかかるエネルギー消費がありません。サーバールームを冷却する必要もないので、環境に優しいというメリットがあります。もちろんある程度冷却の必要はあるものの、熱の逃げやすさは体積に比例するため、サーバールームよりも小さいエッジボックスではより簡易的に行うことができます。

 また、通信がボックス内で完結するのでセキュリティ的にも安心感があります。電波が断たれた場合にもボックス自体は処理を継続できる点や、AI処理の遅延時間が短いことによるリアルタイム性の高さなども、スマートシティに求められる要件です。

 一方で、暑さ寒さや雨などの環境変化や停電・地震などに対する頑健性など求められる品質水準が高いため、日本の昔ながらのものづくりに立ち返りしっかり作り込むことを行っています。