【ディープラーニング×ビジネス】#8 ファッショントレンド解析からスマートシティへーー「待ちのない街」と「情報に出逢える街」が生み出す循環

ディープラーニング 活用事例紹介 #8[ニューラルポケット株式会社]

カメラ設置や調達、シミュレーションでのデータ生成にも独自の強み

――御社の強みについて教えてください。

佐々木

 どのようなカメラを使うかや、カメラをどこにどう設置するのかなど、カメラの設置に関しても独自のノウハウがあります。

 カメラ設置に関するノウハウを効率的に提供するため、ニューラルエンジニアリングという子会社を設立し、カメラの設置・画角調整やデバイス調達などの関連業務を一手に行っています。AIの精度向上をきっちりやりつつ、足りない分をどう埋めていくかの努力をしっかり行っているのが当社の特徴だと考えています。

 また、車両検知は倉庫でも使用できますが、海外と日本ではトラックの見た目が違うことがあります。そもそも車体の見た目が違いますし、画角も日本では上から撮影したものは多くありません。オープンデータを学習に使うこともできますが、そのまま使っても求められている精度に達しないことがあります。そこで、データ収集を独自で行ったり、シミュレーションデータを使ってかさ増しを行う技術なども利用しています。

 車両検知と近い話として、ナンバープレート認識の技術でも興味深い話があります。通常、ナンバープレート認識はOCRで行うためほぼ静止している状態で認識しますが、当社では独自の技術を使うことで走行中の車両でも認識が可能です。

 これを実現しているのが、ナンバープレートのデータをシミュレーションで生成する手法です。カメラで撮影した際の画像のブレや汚れ方を踏まえて学習データを精緻化するノウハウを活用することで、シミュレーションを用いた学習サイクルを実現しています。

 Unityさんと共同で行ったプロジェクトもご紹介します。スマートシティにおいて、カメラで刀や拳銃を持っている危険状態の人間を認識したいのですが、それらの学習データの数が少ないので、シミュレーションで生成しようという取り組みです。

※ニューラルポケット社提供

佐々木

 一般的にシミュレーションデータで学習させたモデルを現実で使おうとすると性能が出ないケースが多いですが、特殊な背景の形式で学習させると性能が出ることがこのプロジェクトで判明しました。画像を見ていただければわかる通り、背景が若干気持ち悪いですが(笑)これらで学習を行うことで性能が上がることが判明した、非常に興味深いプロジェクトでした。

ディープラーニングは不可能を可能にする魔法の杖であり続ける

――最後に、ディープラーニング活用のポイントと、読者へのメッセージをお願いします。

佐々木

 ひとつは、よく言われることですがビジネスとしての設計をきちんと行うことです。技術的に面白いからではなく、どのようなビジネスインパクトを最終的に刈り取りたいのか、活用を決める前にきちんと定義すべきです。

 次に、ディープラーニング以外にも技術的に解決が必要な項目をリストアップし、それらを潰していくことです。通常、ディープラーニングを活用しようとしても、それ以外の箇所が課題になるケースが大変多く、デバイスや通信、サーバー周りも含めて、トータルなソリューションづくりを行う必要があります。

 最後に、これはAIエンジニアの方へ向けたメッセージですが、AIモデルをただ作って終わりではなく、実際に現場で使えるモデルを作るためのノウハウ獲得を目指してほしいと思います。

 オープンデータでAIモデルを作るところまでは、昨今誰にでもできるよう民主化されつつあります。カメラ画像を使うのであれば雪や雨などの自然現象にどう対応するかなど、問題を正しく分析し、改善プランを立てられることが、これからのAIエンジニアに求められる非常に重要な要素だと思います。

 スマートシティ実現にはやることが山積みです。

 人間の情報取得は目からが7~8割を占めると言われていますが、ディープラーニング活用の中でも画像の領域はまだまだ手つかずのままです。それらを埋めていき、当社の定義するスマートシティを実現するという点において、ディープラーニングは当社にとって「不可能を可能にする魔法の杖」であり続けます。