「日経 自治体DXアワード」大賞の北九州市 官民格差を埋めるAI・RPA活用推進の鍵は

[G検定 合格者インタビューvol.15]ディープラーニング × 北九州市のAI活用(DX)推進

「日経 自治体DXアワード」で大賞受賞

――G検定・E資格の合格後、現在の部署に異動された経緯は。

髙塚

 詳しくは後述しますが、北九州市は数年前からAI音声認識を活用した議事録等作成支援システムやAI-OCRなどのAIが導入されています。私も「こういうAIを入れてほしい」と、デジタル市役所推進室の前身にあたる情報政策課に要望を出していました。そういった流れもあり、「自分もAIを広げる立場になりたいな」と思っていました。

 G検定までは教養のつもりでしたが、E資格は「仕事に活かせたらいいな」と思って取りました。そもそも、前述の資格取得助成制度は「業務に役立てること」が前提です。そのため助成制度に応募するときから「E資格を取れたらAI活用を進める部署に行けるかな」とは思っていました。異動希望調査の際に希望を伝え、デジタル市役所推進室への異動が叶いました。

――G検定・E資格の受験後、AIに対する印象は変わりましたか。

髙塚

 最初は「これからAIにあらゆる仕事が奪われてしまう」「AIは何でもできるんだ」というイメージでした。現在の部署は各課の職員から「こういうことはAIでできそうか」という相談が寄せられるのですが、今の技術で実現できるか否かの目利きができるようになったり、「○○社が出しているこの製品を活用するといいよ」といったアドバイスもできるようになりました。

 また、E資格まで取ったことで、素人ながらコードを書く大変さもわかるようになりました。技術者の人と話をする際に、技術者の方の考えていることやポイントが少しはわかるようになりましたね。

――2022年4月には、第1回「日経 自治体DXアワード」において、先進的なDXの取組を行う自治体として、「大賞」を受賞されました。北九州市のDXの状況について教えてください。

髙塚

 北九州市は、2021年12月に「北九州市DX推進計画」を策定しました。少子高齢化による人口減少と団塊ジュニア世代が65歳以上になり高齢者人口がピークを迎えることで労働力の絶対量が不足することが懸念される「2040年問題」に対応するべく、デジタル技術を活用して労働生産性を向上させる必要があると考えています。

国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2040年頃には20歳代前半の人口は団塊ジュニア世代の半分程度に止まるとされている。北九州市でも、若年労働力の深刻な供給不足が見込まれている。

髙塚

 北九州市では、デジタル技術の活用により、行政サービスや市役所業務を抜本的に見直す市役所のDXを推進するとともに、地域のDXに波及・拡大させ、「デジタルで快適・便利な幸せなまち」を目指しています。

 そのために、12の「集中取組項目」を設定しています。そのうちのひとつに「AI・RPAの利用促進」があります。2017年度から市議会事務局でのAI議事録等作成支援システムを導入して以降、全庁的にRPA、AI-OCR、AIチャットボットを導入。2021年度は、約15,000時間の作業時間を削減しました。

市民目線の「デジタル市役所」構築に向けた基盤整備のため、12の「集中取組項目」を設定。

髙塚

 「日経 自治体DXアワード」では、5部門中「デジタル人材育成部門」「行政業務/サービス変革部門」「地域産業デジタル化推進部門」の3つの部門賞を受賞したことで大賞受賞となりました。私が主に関わったのは「デジタル人材育成部門」と「行政業務/サービス変革部門」です。

 まず「デジタル人材育成部門」では、ローコードツールを活用したシステム内製化の推進を行いました。サイボウズのローコードツール「kintone」の研修を実施し、業務改善のためのシステムを内製化できるような人材育成に取り組みました。

 「行政業務/サービス変革部門」では、AI議事録等作成支援サービスやAI-OCRサービスなど、デジタル技術を活用した事務作業を各部署から集約して検証・実行する「デジラボ」を設置しました。2021年5月から12月までの試行期間8カ月で、約5,500時間の業務削減に実現しました。

「デジラボ(Digi-Lab:Digital Laboratory)」では、AI・RPAを活用した業務に関する質問・相談も随時受け付け。各業務への伴走支援も行っている。

――現在抱える課題と、今後の取り組みの方向性を教えてください。

髙塚

 職員のAI・RPAリテラシーが高い状況にあるとはまだまだいえないため、AI・RPAを使いこなせるようにするとともに、人材育成の強化が課題のひとつです。

 個人的な野望としては、AI勉強会などのコミュニティを庁内に作って、行政におけるAIの活用方法等について調査・研究し、ノーコードツールによるAI内製化につなげたいと考えています。また、AI・RPAの利用促進するための前提として、各部署で異なる業務フローの共通化や、アナログな業務のデジタル化・データ化も必要です。

 今後の方向性としては、北九州市初の先導的なAI×データ活用プロジェクトを創出して、「AI活用先進都市」を目指すことです。コモディティ化されたAIではなく、今まだ世の中にないAIを自分たちでつくってみたいと考えています。

 例えば、今考えているのは、情報公開請求時の黒塗り作業をサポートするAIの開発です。市民の方などから行政文書の開示を請求された際、個人情報や機密情報にあたる箇所はマジックで黒塗りしてお出しするのですが、個人情報等に当たるか否かは、条例等と照らし合わせながら判断していきます。

 そこをAIがサポートしてくれるようなサービスを作れたらいいなと思っています。なかなか時間もなく、所管する職員たちも忙しいのですぐには難しいとは思いますが……。行政の現場には、このようなネタはまだまだたくさん転がっています。