【ディープラーニング×ビジネス】#9 電通が取り組むAIを活用した視聴率予測と広告枠の最適化

ディープラーニング 活用事例紹介 #9[株式会社電通]

人工衛星×AIでキャベツの出荷量を予測

――ほかにAI関連で取り組まれているプロジェクトはあるでしょうか。

荒川

 そうですね。変わったところですとディープラーニングによる画像認識と衛星画像データを組み合わせたキャベツの価格予測のプロジェクトがあります。

出典:電通提供資料

荒川

 JAXAの人工衛星から送られてくるキャベツ畑の衛星画像から、AIによる画像認識でキャベツの収穫量、出荷量を予測します。上図のとおり、色つきの箱がキャベツ畑の一区画を表しており、色が変化し青に近づくほど収穫適齢期であることがわかります。これによって特定の時期にどのくらい出荷されるのかの予測が可能となります。

 キャベツの出荷量が多く価格が安い場合、調味料など関連商品の需要が高まるので、そのタイミングで広告を集中投下して売上の“山”を作りたいという食品会社のニーズからプロジェクトが始まりました。

 出荷量が予測できることで食品会社は売上増加が見込めますし、関連商品の配荷量を調整できることから、フードロス削減にもつながります。まだ先行研究段階ですが、食のサステナビリティにつながる取り組みだと感じています。

視聴率予測、最適化をドアノックとしてテレビ業界全体のDXを

――視聴率予測や広告枠最適化などの今後の展望を教えてください。

荒川

 個人的には、まずは現在取り組んでいるスポット取引というテレビ広告枠の領域でDXを進めていきたいと考えています。足元ではSHARESTの予測精度の向上、組換えフローの効率化に向けた開発を続けており、例えば、新型コロナ流行中の視聴率データをどう扱うかも課題のひとつです。新型コロナに限らず、こうしたイレギュラーな事態へも対応できるよう、学習データを増やすなどして、AIモデルの強度を高めていきたいですね。

 また、現在は予測と最適化という基礎技術の開発とトライアルを進めていますが、本運用の拡大に向けて、より放送局との連携を強化していくことも不可欠だと考えています。

 テレビ広告は、公共の電波を通じて日本中に届けられる放送事業の一部であり、広告枠運用にミスは許されません。そのため、日々の広告枠・素材運用には、広告会社・放送局ともに二重三重のチェック体制が敷かれています。

 しかし、人の目によるチェックや人手でのシステム連携がある限り、広告枠のスピーディーな運用には限界があります。だからこそ、広告会社と放送局の連携フローを見直し、システム連携を密にすることで、テレビ広告の新たな可能性が開けると思っています。

 こうした課題がテレビ業界には山積しており、ディープラーニングも活用しつつ、業界全体のシステム連携の在り方にもメスを入れ、テレビビジネスのDXを推進していきたいです。