鍵は全社員のデジタルリテラシー向上 ~DX実現に向けたデジタル人材育成の進め方~

NexTech Week 2022【秋】特別講演レポート(10/27)

 産業界におけるデジタル人材育成の動きが加速している。DX実現に向けては、企業全体での取り組みが重要だが、その鍵は全社員がデジタルを理解し「使える人材」になることだ。「NexTech Week」(2022年10月27日[木]、幕張メッセ)において、特別講演「鍵は全社員のデジタルリテラシー向上 ~DX実現に向けたデジタル人材育成の進め方」が行われ、全社におけるデジタル人材育成の重要性が語られた。

NexTech Week特別講演「鍵は全社員のデジタルリテラシー向上 ~DX実現に向けたデジタル人材育成の進め方~」

 登壇者は、デジタルリテラシー協議会事務局/株式会社ディジタルグロースアカデミア代表取締役 高橋範光氏と、株式会社大林組DX本部本部長室デジタル教育課長 倉形直樹氏、そして進行役として、一般社団法人日本ディープラーニング協会理事/事務局長 岡田隆太朗

氏の3名だ。

キーノートスピーチ「デジタル人材育成における鍵とは」

 まずデジタルリテラシー評議会事務局の高橋氏が、「デジタル人材育成における鍵とは」と題したキーノートスピーチを行い、全社員がデジタルリテラシーを向上する重要性を説いた。

キーノートスピーチ中の高橋氏

高橋氏

 デジタルリテラシーがないと、多くの人がデジタルに対して不安感をおぼえるのですね。よくデジタルについて知らない人が「このボタンを押したら爆発するんじゃないか」と怯える話がありますが、もちろん爆発するなんてことはありません。でも、例えばメディアでは、情報漏洩やサイバー攻撃の報道が後を絶たず、「デジタルが怖い」という印象を抱きがちです。

 しかし、デジタルツールは決して万能ということではありません。そこで、デジタルに対し不安を抱いていると、欠点ばかり目につき、結局「人間の方が優れている」という話になり、デジタルの導入に至らない。これが、リテラシーがないために多くの企業で起こっている現状ではないでしょうか。

 ではデジタルリテラシーを身につけると、どのような効果があるのか。

 高橋氏は、「(デジタルに対する)不安がなくなること」「(皆が)デジタル活用のアイデア出しに協力できること」、そして「組織のDXを遅滞なく進めていけること」の3つを提示する。

高橋氏

 ひとつめが「不安がなくなること」。デジタル化を不安なく、自分事と捉え、前向きに使ってみようと考えられるようになる。2つ目が「アイデア出しに協力できること」です。いろいろな意見が各部署から自発的に出てくることで、会社組織のDXは高い推進力を持ちます。そして3つ目が、「組織のDXを遅滞なく進めていける」ことです。

 ここで高橋氏は、組織の「DX推進力」に関するオリジナルの方程式を紹介する。

 まず社内の人材を、「デジタルを知らない人材」、「デジタルを理解している人材」、「デジタル使える人材」、「デジタルを活かせる(企画できる)人材」、「デジタルを作れる(エンジニア)人材」の5つに分割。

 さらに、5タイプの人材が「DX推進力」に与える影響について、まず「デジタルを知らない人材」は、DX推進において阻害要因になるので「−(マイナス)」に。「デジタルを理解している人材」は、リテラシーを持っていてもDXを推進する要因にならないので、「0(ニュートラル)」。「デジタル使える人材」は、成果につながるので「+(プラス)」に。そして、「デジタルを活かせる(企画できる)人材」「デジタルを作れる(エンジニア)人材」は、「×(掛け算)」で効いてくると話す。

高橋氏

 多くの企業では、DXに取り組もうというときに、まずエンジニアを育てよう、あるいは採用しようとします。

 仮に100人の組織が、10人エンジニア(「デジタルを作れる人材」)を育てたとします。でも彼らは企画がないと開発できない。そこで、「デジタルを作れる人材」を5人、「デジタルを活かせる(企画できる)人材」を5人育てたとすると、DX推進力は、「5×5=25」となります。

 しかし、「デジタルを知らない人材」が90人いた場合には、−90となり、これが重い足枷になる。じゃあ、デジタルリテラシーを身につけようと、「デジタルを知らない人材」のうち半数を「デジタルを知っている人材」に寄せたとしても、まだ−45と、マイナス部分が大きく残るのですね。

 だからこそ、全員がデジタルリテラシーを身につけないといけないと言っているのです。これが、先ほどからお伝えしている、なぜ全社員にデジタルリテラシーの向上が必要かという答えのひとつです。

組織におけるDX推進力とは

 さらに高橋氏は、実際にデジタルリテラシーを学ぶときの具体的な指標として、AIに関する「G検定」(日本ディープラーニング協会)、ITに関する「ITパスポート試験」(IPA)、データ活用に関する「データサイエンティスト検定」(データサイエンティスト協会)の3検定の取得を推薦する。

高橋氏

 これら3検定は、いずれもエンジニアのための資格ではなく、一般向けのもの。万人のデジタルリテラシーとして、“読み書きそろばん”のひとつとして、ぜひ取得していただければと思います。

デジタルリテラシーの3要素

●登壇者紹介

高橋 範光(たかはし のりみつ)氏

アクセンチュア、株式会社チェンジを経て、チェンジとKDDIのデジタル人材育成合弁会社である株式会社ディジタルグロースアカデミアを創業し、現在代表取締役社長。一般社団法人データサイエンティスト協会スキル定義委員、独立行政法人情報処理推進機構 専門委員を務め、デジタルリテラシー協議会の設立に関与し、現在事務局としてデジタルリテラシーの普及・浸透を担う。その他、一般社団法人オープンガバメント・コンソーシアムデジタル人材育成分科会主査など、企業から官公庁、自治体まで幅広くデジタル人材育成を推進。

倉形 直樹(くらかた なおき)氏

早稲田大学大学院卒業後、大手SIerに入社。その後、数社の経験を経て、2021年大林組入社。社内におけるMicrosoft365を中心とする情報共有・コミュニケーションツールの利活用推進に従事。2022年2月DX本部発足。2022年4月から現職。一級建築士。認定ファシリティマネジャー。IPAプロジェクトマネージャー試験他合格。

岡田 隆太朗(おかだ りゅうたろう)氏

慶應義塾大学経済学部在学中に起業。代表取締役として会社経営およびプロジェクトリーダーとして従事。2007年、インターネットリサーチを基幹事業とする株式会社ゲイン執行役員となり、その後代表取締役社長に就任(2016年退任)。2012年、株式会社ABEJAを共同創業。2013年ディグラム・ラボ株式会社を設立。2014年には博報堂との共同で株式会社NEWSYを設立し、「しらべぇ」を運営。2017年、ディープラーニングの産業活用促進を目的に一般社団法人日本ディープラーニング協会を設立し事務局長に就任。2018年より同理事兼任。